第46章 コンファインミー
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「まぁ、話の内容はわかってるだろうけれど」
その前置きがあって、校長の根津はくるりと椅子を回して
寧々に向き直った。
「ヒーロー科への転入の話さ!」
机の上で揺らぐ紅茶は、東インド会社のセイロンティー
そういえば、今日は何も飲んでいないと初めて気づいて、用意されたミルクを流し入れた。
紅茶の中でジワリと、入道雲が沸き立つみたいだ。
もう季節は冬になろうというのに…。
一口だけ口につけて、ゆっくりとティーソーサーにカップを戻す。
『私は……ヒーローになるべきなのでしょうか』
「そうだね。
これは、社会のためにでもあるし、我が校のためでもあるし
そして、君自身のためでもあるさ」
『私…?』
「そう。
以前、僕は君に一度ヒーロー科への編入を促したよね」
寧々は静かにうなづいた。
直接、根津からされた訳ではなく、リカバリーガールからではあったが
編入の話は1度受けて、断っている。
「もちろん、君の意見を尊重するつもりだったよ。
こんな自体になるまではね」
『……』
「日本中に、君の個性は知らされた。
顔も、名前も、個性も。
これから出会う全ての人が、君を見て、気づくだろう。
それだけの容姿だ、嫌でも目立つだろうね」
『………』
寧々はドンドン心が重くなっていくのを感じていた。
その度に握ったスカートがシワを作る。
「それだけの強個性……俗っぽい言い方をするとチート個性。
普通に大学を出て、就職するときになんと言われると思う?」
『…っ』
嫌だ、聞いたくない。
寧々は思わず耳を塞ぎそうになる。
だがそんな無礼を寧々が働けるわけもなく、ただ震えて、膝を凝視して、死刑宣告を待つだけだった。
「「君、強個性の子だよね?なんでヒーローにならなかったの?」ダヨ」
目頭がツンと痛くなった。
涙を止めようとする前にボタリ…手の甲握ったら落ちて濡れた。