第5章 レットミー
〜寧々side〜
急いで席に戻ると、ステージ上には緑谷くんと焦凍が向かい合って立っていた
開始早々、氷柱を生む焦凍
緑谷くんはそれを撃破するけど、その勢いが凄すぎて観客席まで撃風が及ぶ
それを何度も何度も
『緑谷くん、指の色おかしいよね…』
「うん、なんか鬱血してるみたいに見える…」
焦凍も、焦ったように攻撃している
そうして遂に、緑谷くんの足を捕らえたが、
またも撃破される
焦凍、さっきから体に霜が降りてる…
今度は緑谷くんに間合いを詰める焦凍
でも、動きがなんだかおかしい…鈍い
詰めたところで、緑谷くんに腹部を殴られ吹っ飛ばされる
『焦凍!』
鈍い音を立ててステージに打ち付けられる焦凍
どう見てもボロボロなのは緑谷君の方なのに、焦凍も体力消耗しているのかなかなか決着はつかない
私はただただ祈ることしか出来なかった
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〜轟side〜
右手はもう冷たさで感覚を失っている
だが俺は、絶対使わない…
愛を知らず、お母さんを苦しめたあいつの力には頼らない、そう決めたんだ
「あいつの力は、使わない…」
そう震える体で言葉を絞り出すと
「君の力じゃないか!!」
緑谷に叫ばれ、ハッとする
お母さんの言葉が、ずっと忘れていた大切な言
「血にとらわれることなんてない、
なりたい自分になっていいんだよ」
そしてもうひとつ、寧々の声が蘇る
『作られたなんて、いわないで』…と
俺だけの力で、なりたい自分に…
そう思った時には左側が炎に包まれていた
「ありがとな、緑谷」
全力でお前に勝つ