第44章 アバウトミー
萎縮する切島を引き連れて、爆豪が寧々の家にやって来たのは午後6時をまわったところだった。
切島が萎縮したのは、寧々の家の大きさでも、キャラの強い母親のせいでもない、
玄関先に群がる大量の記者。
今は、使用人達がどうにか押さえつけているが、このままでは玄関の門を突破されるのも時間の問題だ。
ガヤガヤと喧しい玄関を抜け、奥に進んでいくほど、世間の喧騒から離れていく。
アラタと物間が視線を向けるロビーで、
爆豪は、奥様と紹介された寧々の母親と初めて対面した。
「あら、えっと…爆豪くんね。近くで見ても本当に良い男ねー、でも…高校生…だったわよね?テレビと見た感じが…」
「あ、こいつ…いま2歳若返る個性にかかってて…」
切島が雑に説明すると、母親は「え、なにその素敵な個性…ちょっと詳しく…」と目を輝かせた。
「…こんな事になってんのに、冷静なんすね」
爆豪は、母親を見つめながらそんなことを聞いた。
ーーー寧々が言っていた通り、目の前の女は寧々とはあまり似ていない。物間によく似たタレ目のグレーブルーの瞳と、金髪のストレートヘアのその女は少しだけ肩を持ち上げて笑った。
「私は、寧々にもヒーローになって欲しかったからね」
「……。」