第43章 エクスポーズミー
寧々の震える手は差し出したグラスも掴めず
轟は口元にグラスをよせて、どうにか飲ませてやると
やっと息を吐いた寧々の肩を抱いた。
未だ鳴り続けている着信音とメール音に寧々は耳を塞ぎ身を縮める。
「スマホ、電源切るか?」
『うん…』
弱々しく帰ってきた返事に、スマートフォンを探し、確認すると
LINEの通知は300を超えていた。
個性がバレれば…こうなる事は分かっていた。
だからヒーロー科はA組B組共に
寧々の個性による恩恵……つまりもう1人のリカバリーガールとしての利用価値と引き換えに、個性については他言しないように言われていた。
それが、彼女が林間学校に付いてくる唯一の交換条件だった。
『個性がキスって恥ずかしいから…』と照れる寧々に、その真意を知らないヒーロー科達は
「ぜひヒーローに!」と誘った。
それが寧々を最も追い詰める言葉とも知らずに…。
彼女は傷ついたそぶりも見せずに『私なんて…そんな』と首を横に振る。
寧々の元々の性格が災いして、ただの謙遜にしか見えないのが、変に作用し、更に「そんな事ないよ!ヒーローになれるよ!」とまた傷口をえぐった。
そんな姿を見ていても、爆豪と轟は表立って寧々を庇うとができない。
それが彼女の望みだからだ。
ーーーーヒーローになりたくない。
そんな歪んだ…マジョリティに適さない思想を持っているとバレたくない。
あくまでモブに徹する。
それが彼女の望みだから…