第43章 エクスポーズミー
物間は咄嗟にテレビを切ったが、時すでに遅し…
小学、中学時代からの友人達はザワツキながら寧々に問う。
「寧々…うそ、だよね?コピーはコピーでもコントロールできないっていってなかった?」
「でも、寧々のお母さんってキスで時間止める個性だし…」
「そんな強個性でなんでヒーロー科じゃないの…?」
『………』
寧々は轟にすがったまま目を泳がせる。
どうしたらいい…なんと言い訳したらいい…?
未だポケットの中でLINEの通知を知らせてくるスマートフォン
その通知音が怖い……
このニュース、もしクラスメイトが見ていたら……
ただでさえ、ヒーロー科に妬みと鬱憤がたまっている普通科生徒だ…
1-Aの巻き込まれた様々なヴィランによる攻撃が原因で、寮生活を強いられてからというもの
その鬱憤は以前とは比べものにもならない。
目の前のかつての友人たちだってそうだろう…。
誰もが憧れるヒーローになれるのに、ならない女…妬まれ、嫌われても…仕方がない。
そう思っていたのに、友人たちの反応は、予想とは反対だった。
「凄いじゃん!寧々」
『へぇ…?』
「なんでヒーロー科落ちたの?」
「あれじゃん?コピーする人いなくて、とかじゃん?」
「たしかに初対面の人にキスは難関度高いね」
「でもヒーローになれば、みんな協力してくれるし!その時々に必要な個性が倍になるとか…最高じゃん!」
皆が寧々にかけたフォローと賞賛の言葉は、あくまで【寧々もヒーローになりたくて、ヒーロー科を受けて落ちた】という前提のもとに投げかけられた。
もちろん、そんな事実はないし、寧々は何度も言っている通りヒーローになりたいなど微塵も思っていない。
だが、世論…当たり前、当然、みんなそう…
そんなマジョリティを押し付けられただけの寧々は、否定など到底できず…
喉元まで迫る吐き気に、轟の胸へと顔を埋めた。
「寧々、部屋に戻るか?」
『うん…ごめん…連れてって
ここから逃がして』
寧々の悲痛な唸りに轟は静かに頷いて、この場は物間とアラタに任せ大広間を後にした。