第43章 エクスポーズミー
群衆の中心で苦笑う寧々と、その寧々の腰にさりげなく手を回すアラタ
チラリと二人に戦線の視線を向けると、二人はズカズカと寧々に歩み寄り、アラタから引き剥がした。
『ちょ…焦凍、お兄ちゃん…』
大人げないのは分かっている。
それでもやっぱり譲れないものはあるのだと2人は思ったのだが、
「ボクの、寧々だからね!
気安く触らないで欲しいなぁ?!ハハハハハっっグ!」
高らかに笑っていたはずの物間が、突然力を失いガクッとうな垂れた。
「もう…寧人ってここまで重症だったかしらねぇ?」
『ママ!』
「あ、パーティ続けて、
寧人はこっちでどうにかしておくから」
時折、精神がアレなお兄ちゃんを引きずってママが大広間を後にする。
振り返ると、アラタはもう中学時代のファンクラブ会員に囲まれていたし
焦凍と私は視線が合うと、クスリと笑いあった。
「俺の想像してたパーティと、規模が違ぇんだな」
『まぁ、アラタだからねぇ』
人の輪の中心にいる幼馴染を眺めながら寧々はグラスに口をつける。
『私は人混みあんまり得意じゃないから…』と苦笑うと
「奇遇だな、俺もだ」と轟は綺麗に笑って返事をする。
「こういう時、なんて言うんだったっけな…
「夜風にあたりに行きませんか?、お姫様…」だったか?」
昔お母さんと見た白黒映画で、王子が姫にしていたように
手を引いて首をかしげると、寧々は頬をまた赤く染めた。
あの映画はなんという名前だったのだろうか
今度お母さんに聞いてみよう。
いつか、寧々と一緒に見れたら…
そう思うと暖かな気持ちが体を包む。
寧々が俺にくれたら一番大きな感情だ。
『はい』
と、照れながら答えてくれる愛しい人は紛れもなく、俺にとってのお姫様だった。