第43章 エクスポーズミー
遠くでざわつく声がする。
ぼんやりと瞳を開けると、目に入った時計は2時間ほど睡眠していたことを告げてきた。
うん、と伸ばした両手がダラりとベッドに落ちる。
その時2回ノック音が聞こえて、ドアを開けると
寧々は、開けなかったらよかったと心の底から思った。
一回閉めようとゆっくり扉を引くと、ガッと止められてしまう。
『焦凍…ごめん、1回落ち着かせて』
「どうした、調子悪りぃのか?」
『うん、動悸がするから閉めさせて』
なるべく顔を上げないようにして、更に目を閉じていると額に熱を感じて、思わず目を開けてしまった。
『わ!』
「熱…はねぇみたいだけどな」
そう呟く轟の額の先で、寧々は赤面して口をパクパクさせる。
オールバックに持ち上げられた二色の髪は、丁寧に櫛が通されている。
綺麗な顔面を隠す前髪が、あるかないかで違いが大きすぎて…
露出の増えた顔は、全力でイケメンオーラをぶちまけてくる。
その上、その上だ…
『なんで…タキシード着てるのかなぁ…』
両手で顔を隠した状態で寧々が唸る
これはもう暴力だ、
美しさの暴力。
ただでさえありえないほどかっこいいのに、そんな人がこんな格好をして私の心臓が持つはずないのだ。
「アラタが用意してくれた
寧々もそろそろ着替えたほうがいいって言ってたから言いに来た」
『うん、そっか分かったよ…』
着替えたら行くね、と言い今度こそドアを閉めようとしたのだが焦凍は一向に手を離す様子を見せず、寧々は首を傾げた。
『なに…?』
「まだ…離れたくねぇ」
やっと二人っきりになれたんだから、と付け加えると轟はそっと寧々の顎を持ち上げる
そして赤面して固まる寧々の唇を優しく奪った。