第43章 エクスポーズミー
寧々の実家に着くと、寧々の母が両手を広げて迎え入れてくれた。
サバサバというのか、明るいというのか
寧々の母親は、俺のお母さんとは違って大きく笑う人だ。
寧々はどちらかと言うと柔らかく笑う。
性格も、外見も父親に似ていると言っていたのを薄っすらと思い出した。
奥の部屋で英字新聞を片手にコーヒーを飲んでいたアラタは
寧々を見た途端駆け寄って抱きつこうとしたが、轟と物間に阻まれ
せっかく開いた腕で、何を思ったか轟と物間に抱きついた。
「来てくれてありがとな!」
「ちょ、離してくれる!?暑苦しい…」
と顔をしかめる物間に反して
轟は驚いたままの表情で「あぁ、誘ってくれてありがとな」と返事をする。
アラタは轟の返事に満足そうに笑うと
「な、裏庭で遊ぼうぜ?ゴルフ?プール…は寒いか…テニスは?」と誘う。
「寧々は何がしたい?」ときいてくるアラタに寧々は手を振って断った
『私はちょっと疲れたから、部屋で休むね』
「そかそか、ならまたパーティでな」
何かを感じたように引きとめないアラタ
轟と物間は心配そうに寧々を見つめたが
寧々はニコリと笑ってドアから部屋を出た。
(少しノリが悪かった…かな)
だけれど、今は楽しく遊べる気分でもない。
この2日の間に、心を決めなければ…。
勝己にするか、焦凍にするか……
それとも、2人ともとサヨナラするか。
部屋のドアを開けると、むせ返るような薔薇の匂い
部屋の至る所に飾られたピンクローズ
きっとアラタからの贈り物だろう。
ベッドの上には、また溢れかえるほどの贈り物と、
ガラス張りのドレッサーに可愛らしいドレスがかけられている。
『今日はこれを着ろってことかな…』
指で触れると、シルクの素材は艶めくが
こんな素敵な贈り物にも、私の心は跳ねない。
まるで不感症になった心。
こんな状態で、アラタを送り出すのは心苦しい。
きっとひと眠りすれば落ち着くはずだとまぶたを閉じた。