第4章 フィールミー
『私には、計り知れないけど…
焦凍くんは…綺麗だよ』
「寧々…」
『作られた、なんて言わないで
きっとお母さんも、すごく辛くて追い込まれてたんだと思うの
でも絶対、焦凍くんのこと嫌いじゃないと思うの』
「…………」
『だから、作られたなんて言わないで』
俺は、自分の頬が濡れていることに気づいた
(あぁ、泣いたのはいつぶりだろう)
寧々を引き寄せ抱きしめる
寧々も、そっと背中に腕を回してくれた
大丈夫、大丈夫とさすってくれる
「俺は必ず一位になる
決して右手を使わずに」
「愛を知らない奴の個性を使って一位になって
それで寧々を俺のモノにしても
それは意味がない」
『…そっか
そう決めたなら、私は応援するよ』
もう一度強く、壊れないように抱きしめる
「一位になったら、また告白させてくれ」
ほっそりとした肩に手をかけ、
体を離して顔を見つめる
「もう1度言って、その時寧々が俺を好きだとおもってくれたら、俺の恋人になってほしい」
あんまり見つめすぎたのか、寧々の顔がみるみる赤くなる
かわいいな…そんな顔されたら理性がどうにかなりそうだ
邪な考えを封印して、立ち上がった
手を差し出し、寧々も立ち上がる
「そろそろ控え室に行く、時間を取らせたな
ありがとう」
『ううん、私もありがと
大切な話してくれて…
頑張ってね、焦凍くん』
「良ければ、もう呼び捨てにしてくれないか」
手を握ったまま頼むと、寧々は少し照れたように
『焦凍』と呼んでくれた
寧々に見送られ控え室に向かう
穏やかで、満ち足りた気分だった
アイツの顔を見るまでは