第42章 コンビニエントフォーミー5
クラスメイトの叫び声が「キャーーー!」だとか「おおおー」だとか煩い、喧しい。のにほとんど耳に入らない。
真っ赤になったまま、ただ立ちすくむ寧々は
目の前の爆豪から目をそらさずにいた。
「誰が?誰を愛してんだ?」
追い討ちをかけるように心操が問うと
また教室内が静かになる。
「俺が、寧々を。」
もう逃げ場がなくなった寧々は、
カバンも持たずに教室から走り出した。
走り出したのは、恥ずかしさと、嬉しさからで
(私の個性…しらなくても、また好きになってくれたってことで…いいのかな)
寮部屋に飛び込んですぐ、ズルズルとドアにすがりながら床に腰を下ろす。
心操がかけた洗脳は本音を言うことだ。
「寧々に好きだと言え」なら洗脳で言わされている節もあるけれど、本音となれば爆豪の言葉を信じる他ない。
寧々は再度両手で頬を掴んで悶える。
「好き」でも「大好き」でもない…
「愛してる」だ。
嘘偽りのないその言葉は寧々の胸に刺さった。
爆豪に「嫌い」だと言われて色濃くなった自分の気持ち…
(私、やっぱり……)
そう思ったところで部屋に響くノック音
『…はい?』
「さきだよー、カバン!忘れてるー」