第40章 コンビニエントフォーミー3
2時間が過ぎ、少し辺りが暗くなる
(あんのクソ女…いつまで男の部屋に居座っとんだ)
さらに2時間経つとあたりはどっぷり日が暮れた
「クッソ…女がこんな暗れぇ時間まで男部屋に入り浸ってんじゃねぇ!」
そのまた1時間経つと
付いていた電気は徐々に消え始め。
皆の就寝を伝えるように、B組寮は暗黒に包まれた。
「………あんの…クソモブビッチが…」
ワナワナと手を震わせて、爆豪はキッと寮を睨みつけた。
「まさか、泊まんじゃねぇよな…
ったく…何してやが………」
そこまで言った爆豪の顔がみるみる朱を帯びる。
怒りからなのか、先日ドア越しで聞こえた寧々の嬌声を思い出してかはわからないが。
とにかく、付き合っている男女が、明かりもつけずにすることと言えば
中学生の爆豪には容易に想像できるものであった。
爆豪はギリリと歯を鳴らして、目の角度をさらに急斜にする。
「クッソアマが…
テメェがその気なら、受けてやるよ…」
何かを心に決め、爆豪はグルリと踵を返し、A組寮へとガツガツ歩いて行った。
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物間の腕に包まれて寧々はぼんやりと爆豪のことを考えていた。
兄のついた嘘は、偶然にも、今の自分には好都合な内容で。
(恋人がいるってなれば、さすがに幻滅するだろうしね…
それにお兄ちゃんとなら、腕組んだりしてても焦凍も気にしないだろうし)
恋人役を作るなんて発想は微塵もなかったので、正直聞いた時は「お兄ちゃんって、天才?」と褒めたたえてしまった。
彼氏が居るのに、焦凍ともベタベタしている女だ。幻滅されて嫌われれば、洗脳云々の誤解も解けるだろう。
(あとは…勝己が戻ってきたら…)
言うだけだ。
もう、勝己とは付き合えない…
勝己が好きになったのは、私じゃない。
小さい時に交わした約束と、思い出だけだ。
その証拠となるキスミーの個性。
私達を繋ぐのは、それだけだ。
「……あれ
なんで………」
飲み込んだはずの真実が、また胸を抉る。
溢れ出した感情が物間の胸を濡らし
気付かないふりをしながら、「んん…」と嘘の寝言を吐いて
強く抱き締めた。