第40章 コンビニエントフォーミー3
「は?」
ここに来て一番の間抜けな声が出た。
固まる爆豪の肩を適当に励ますように叩いて物間は食堂へと消えていく。
ーーーこいびと?
爆豪は思う…ちょっと待て、と。
(なにだ…?つまり…あのモブ女は、今の金髪と付き合ってんのに
半分野郎をキープして、俺に洗脳かけて奪い合いさせてんのか?)
ムカムカと湧き上がる腹立たしさ。
矛先を向ける先はもちろん寧々…なのだが。
処理しきれない様々な感情に、足が動かず、
そのまま寧々を探し出すこともなく、立ちすくむ。
そんな爆豪を残して、食堂でフォアグラのソテーを注文する物間は
鼻歌なんて歌いながら上機嫌だ。
「なぁ、なんであんなこと言ったんだよ
妹ちゃんに怒られんぞ?」
「いーのいーの、なんだかんだ寧々は僕にに弱いからさー♪」
それに、と物間はつづける
「いいじゃん、少しくらい夢見たって」
いつも天邪鬼で心がアレだとしか思えない男の悲しげな声に、拳藤も鉄哲も何も言えなくなる。
最初は、ただのシスコンだと思っていたが、半年一緒に過ごすうちに、物間のその想いが本命に向けられるものとなんだ変わりがないと分かるようになった。
こんなひね曲がった男だからこそ、寧々に対する一途すぎる思いが浮き彫りになる。
誰も愛せなさそうな男の、唯一向けられた愛の矛先
「寧々ちゃんも、重くてたまらないだろうねぇ」
歪みきった愛は、付けれる名前などなく。
その名もない感情は、何角にも角ばった相関図の1つにしかすぎない。
相関図はさらに形を歪めていく。
矢印は絡み合って縺れ合って
もう解けないほどに。