第40章 コンビニエントフォーミー3
深く唸ったまま、無言になる3人
爆豪は食べ終えた皿にスプーンを投げ入れると、
立ち上がり、どこ行くんだ?という切島の問に「あの女とっ捕まえてくる」と答えて立ち去った。
爆豪の姿が見えなくなると、切島は頭を抱えて机に伏す。
「なー、もう俺嘘つきたくねぇよ!」
「諦めろ、切島
お前はジャンケンで負けたんだ
ルール破るのは男らしくねぇぞ?」
「うう…漢気…」
昨日の夜、洗脳され寧々を好きになってしまったと思い込んでいる爆豪に
本当のことを教えようと言う切島と
面白いから隠そうと言う上鳴、瀬呂は
人の恋路に口を出すべきではないという常闇の監督の元
正々堂々ジャンケンでどうするのか決めたのだ。
その結果負けた切島はこうして頭を抱えることしか出来ない。
「でも、爆豪中学の時好きな女いたんだな」
「それ思った、意外だよな
寧々ちゃんにあんまりにもベッタリだったから初恋なんかと思ってた」
「俺には決めた女がいる」「アイツ以外好きになるはずがねぇ」としか言わない爆豪の言葉から中学時代に彼女がいたのだと判断した、事の全容を知らない3人は、爆豪って惚れっぽいんだな。と口を揃えて言う。
逆に事の全てを知る轟、緑谷、飯田はその2テーブル奥で
無言のまま食べ物を胃に流し込んでいた。
ここまで気まずい昼食になっているのは、
轟があまりに暗いオーラを発しているからで……
(気まずいなぁ…)と緑谷は少し視線を上げて、黙々と蕎麦を啜る轟を盗み見た。
(まぁ、無理もないよね…
だって、今まではかっちゃんが口付さんを好きなのって
口付さんがずっと探してた子だからって可能性もあったわけだし…。
でも…)
個性を知らない今、爆豪が寧々を好きだという思いは
ただ純粋に寧々に惹かれたという事になる。
もしその想いを寧々が知ってしまったら
ただでさえ僅差で争っている2人だ
その情報は明らかに爆豪を優勢にしてしまうだろう。
(何度出会っても、恋に落ちる2人…か)
なんだか、呪いみたいだと緑谷は思った。