第38章 コンビニエントフォーミー
寧々に差し出された湯呑みを両手で受け取りながら
緑谷は小さく溜息を吐いた。
「かっちゃんに、口付さんと2年後のかっちゃんの
こと詳しく教えろって言われたんだけど…
断ったらこう…」
ーーーー「クッソ…デクのくせに!舐めとんのか!」
掴まれそうになったのを、スルリと避け、
交わされたことで爆豪は余計に腹を立てて
掴みかかられ、殴りかかられ、爆破され、この有様だという。
「まぁ、かっちゃんの気持ちはわかるんだ」
緑谷はヘラりと笑うと申し訳なさそうに轟を盗み見ながら
ポツリと話し始めた。
「かっちゃんは…ホントに、僕が覚えてる限り昔から
運命の女の子の事をずっと探してたから…
特に、中学2年生の時は
かっちゃんのモテ期みたいな時期で
片っ端から告白してくる後輩を罵倒してた時期だし
まさか未来の自分が、ほかの女の子と付き合ってるって
認めたくないんじゃないかな…
って言ってもその運命の女の子が口付さんなんだけど」
寧々は赤くなる頬を隠すように湯呑みに口をつける。
しばしの沈黙のあと
「でも…それっておかしくねぇか?」
静かに聞いていた轟は冷たい瞳を持ち上げて、寧々を見つめた。
「爆豪は、寧々が運命の女じゃなかったら好きにならなかったってことか?」
『………』
その言葉に
寧々の目はゆっくりと、だが大きく開き
手から滑り落ちた湯呑みが
畳にじわりと水溜りを作った。