第38章 コンビニエントフォーミー
手を繋いだまま寮に戻ってきた2人を見つけた爆豪は
大きく目を開いた。
『あ…』
寧々は、その視線に気付き、パッと轟の手を解く。
(今の勝己は気にしないだろうけど…)
爆豪には自分との記憶などないのだから
後ろめたく思う必要もないと理解はして居ても
やはり、割り切れれない部分がある。
爆豪は俯く寧々を凝視した後
切島たちに付いてキッチンスペースに消えていった。
轟は少し寂しげな寧々の横顔を盗み見て肩を落とした。
「やっぱり、爆豪が気になるよな」
『え?あ……うん…ごめんね』
「いや、いい
分かってる」
気まずい雰囲気の中、待っていたエレベーターがそっと扉を開けた。
そこに乗っていた人の姿に、寧々は息を飲む
『み、緑谷くん…!どうしたの?』
「緑谷、それ、大丈夫か?」
「あー…ははは…うん…ちょっとね」
緑谷の姿はどこもかしこもボロボロで
誰にやられたかは一目瞭然だ。
『勝己にされたの?』
「いや、ちが…わない…けど
でも、昔はわりとこんな感じだったし
慣れっこだから」
「どうしてそんな事になったんだ?」
「それが…」
緑谷は、気まずそうに俯く
『私のせいだよね…
勝己からしたら、二股かけられてる将来なんて…』
「ちがうよ!そうじゃないんだ…ただ…」
狼狽する緑谷に、轟は部屋で話せねぇか?と持ちかける
緑谷は「そうだね」と頷いて
3人を乗せたエレベーターはゆっくりと五階に登っていった。