第38章 コンビニエントフォーミー
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
「大丈夫か?」
焦凍の声にハッとして顔を持ち上げると、
心配そうな表情で覗き込まれていた。
『あ、うん…平気平気』
調べ物がしたくて、一緒に図書室に来てもらったのに
私が上の空では申し訳ない。
「これじゃねぇのか?探してたのって」
焦凍が渡してくれた本は確かに、私の探していたもので
『あーこれこれ、ありがとう!』
受け取ると、ズシリと重かった。
「ケーキか?」
『うん、今週末アラタが
帰国するから
帰国パーティするってママが』
アラタ、の名前に轟が反応を示すと
寧々は、そういえば、と言葉を続けた。
『アラタが、焦凍にも来て欲しいって言ってたんだけど…』
「行っていいのか?」
『焦凍が来てくれるなら…心強いけど』
なぜアラタが轟だけを名指しで読んだのか皆目検討もつかず
寧々はその理由を轟に求める。
轟は「知り合いの知り合いだ」と言葉を濁した。
「爆豪はこねぇのか?」
『うーん…アラタからは焦凍だけしか言われてないけど
本当は誘うつもりだったんだよね…
でも今あんな感じだし…一週間ってことは、月曜日まで個性かかってるし』
「なんか…悪りぃ…」
轟が罪悪感に俯くと、寧々は両手を振って否定した。
『いいの!よく考えてみたら、すごくカオスな空間になるし!』
「…そうだな
4人揃いも揃って寧々の方が好きな男だらけになるな」
さらっと言ってのける「好き」の言葉に
寧々は頬を染めて首を振った
『アラタはもう違うし…
お兄ちゃんもカウントに入らないから』
ケーキの本をペラペラとめくりながら独り言のように呟く寧々に、轟は柔らかく笑いながら
「相変わらず鈍感だな」と言う。
『もう!』とふてくされる寧々の手を取って、図書館を後にした。
「先週、一緒に居なかった分
今週は俺と過ごしてくれねぇか?」
『うん、わかった』
握り返してくれる小さな手が可愛くてたまらない。
好きなところばかり見つかっていく。
この気持ちは拍車がかかるばかり
これ以上好きになれないと思った先がまだまだ続いていく。
不思議だ