第38章 コンビニエントフォーミー
枕を持ち上げて、目に止まったのは
さっきの…あの半分頭と一緒に出ていった女
二年後の俺の彼女みてぇなもんだと紹介された、あのモブ女の写真だった。
「なんだよ…は?なんなんだよ!」
ここに写真を挟んでいるのは
俺しか知らないはずだ
だとしたら、二年後の俺が叶えてぇ夢って……
「ありえねぇ」
ありえねぇ、ありえねぇ…!
俺にはもう決めた女がいる。
名前もわかんねぇ、顔だってもうとっくに忘れた。
キスしたら移る個性と、泣き虫な女ってことだけだ。
それだけを頼って、探し続けてもう八年になる。
狭めぇはずの静岡をやけに広く感じちまう。
何処にいる、何処に隠れてやがんだ。
俺の事なんか、とっくに忘れちまったんか?
だから、二年後の俺は、こんなどこの奴とも分かんねぇ女に
こんな情ねぇ事までして…
「クソ…クソ!!!!」
どんな悪夢だよ
あの女には、あの半分頭と付き合ってんじゃねぇのか?
なのに、こんな…
ぐしゃりと掴んだ前髪が形を変える。
枕の下に挟んだ行為が、ここは二年後の未来だと現実を押し付けてくる。
それでも飲み込めない。
デクが無個性じゃ無くなってることも、
ヒーロースーツを着こなしていることも…
ひょろひょろだったくせに、掴んだ体が筋肉質になっていたことも…
あの女の困ったように、悲しそうに笑った顔が
頭ん中から剥がれねぇのも…
半分頭と出ていった時にムシャクシャしたのも…
喉元に引っかかって飲み込めねぇ…
「クソが……」