第38章 コンビニエントフォーミー
爆豪は何も飲み込むことが出来ないまま、
一番の友人として紹介をされた切島に寮の部屋へと案内された。
「おい」
部屋をあとにしようとする切島に爆豪は声をかける。
「どした?爆豪」
「…デクは、個性があんのか」
「あーそういえばお前、入学した時もそんなこと言ってたな…
あるぞ、すっげーのが…パワーで言ったら…んー
オールマイトくれぇの?」
「な!オールマイト…だぁ!?」
ピキピキ、爆豪の額に音を立てそうなほど浮かび上がる青筋。
それにやっと気づいた切島は焦ってフォローを入れる
「や!でも、
最近はお前、緑谷ともそんな喧嘩してねぇぞ」
「あ゛ぁ!?」
切島がフォローのつもりで言った言葉は爆豪の機嫌を悪化させるだけのものだった。
(これ以上中学時代の爆豪と絡むと、余計に怒らせそうだな…)
そう判断した切島は
「まぁ、あれだ…あと飯だから
また呼びに来るからな!」とそそくさと部屋をあとにした。
一人きりになった部屋の中で、爆豪はベッドに転がる。
「ったく…あの女といい、デクの個性といい…どうなってんだ」
やっぱヴィランか…?幻覚を見せる系統ならありえる。
そもそも雄英が全寮制なんて聞いたことがねぇ
けれど、この部屋は紛れもなく自分の部屋と同じだ。
「でもここが、本当に俺の部屋なら…」
あるはずだ、親も知らない秘密の隠し場所
ーーー「ヒーローになりたい」
そう思い始めた頃から、続けてきた…
どこで聞いたか、もはや覚えていないほどのそれは
【枕の下に夢の写真や願い事を挟むと叶う】といったマジナイだ。
挟んでいるのはもちろん、
誰もが目指す頂のヒーロー「オールマイト」
のはずだったのだが
「なんだよ…これ……」