第38章 コンビニエントフォーミー
「忘れてんなら、寧々は俺が貰う」
轟は寧々を抱きしめたまま爆豪を冷ややかに見つめた。
「あ゛?」
「誰かわかんねぇなら、要らねぇよな」
爆豪はケッと唾を吐き、目の前の2人から目をそらすと
「いらねぇ」
と吐き捨てるように言った
「な!かっちゃん!?!?」
緑谷は事の重大さにギョッとした
「うっせぇデク!
2年後の俺が何考えてんのか知んねぇが
俺にはガキん時から決めた女がいんだよ
そいつ以外は興味ねぇ」
その言葉に寧々は頬が熱に染まり、心臓が跳ねた。
爆豪が2年前でも自分のことをそんな風に思ってくれているのかとうれしくなる
「だから、口付さんが…」
『緑谷くん!…いいの、大丈夫』
緑谷が言おうとすることを止める寧々は、轟から離れると爆豪に笑顔を向けた。
『ごめんね、驚いたよね
私たちもう帰るから気にしないでね、行こ焦凍』
寧々は轟を押し出して保健室を後にする。
緑谷も二人について部屋を出ると、寧々は緑谷に向かって両手を合わせた
『ごめんね、緑谷くん…勝己には、私が子供の頃出会った子だって言わないでほしいの』
「僕は良いけど…どうして?」
『ずっと探してくれてたのに…勝己だけを選べてないの知ったら
ショック受けるだろうし…』
ヘラっと笑ってそう言うが、表情は晴れやかではない
「わかった
口付さんが良いならそれで
じゃあ、僕はかっちゃんにまだ色々と説明しないといけないから…またね」
寧々は緑谷が戻っていくドアを見送ると
ふーと溜息をつく。
『ね、焦凍なんでさっきあんなこと言ったの?
らしくないね』
「わかんねぇ…お前のこと忘れてる爆豪に
なんでかイライラした」
ムッとした表情のままそう答える轟に寧々は『変なの』とクスクス笑った。