第38章 コンビニエントフォーミー
リカバリーガールは急いで保健室に戻り、轟に「どこだい?」と問いかける。
「ここだ」
轟がさっきまで自分の寝て居たベッドのカーテンを開くと
リカバリーは顔をしかめ
「またあんたかい」とため息を吐いた。
「すみま、せん…リカバリーガール」
轟はリカバリーに差し出されたマスクをつける。
「今回は?何人事故起こしたんだい?」
「今回、は、ゲホッ1人も起こしてません」
そう答える彼の体からは咳をするたびに粉のようなものが舞っている。
リカバリーはその生徒にシロップのような薬を渡し、轟に向き直るとやれやれと言いたげに肩をすくめた
「この子は二年生のヒーロー科だよ」
雑に紹介された男はシロップを飲み終え口元を制服の袖でこすりながら轟に会釈した。
「この子の個性はね、【プレイバック】
さっき見ただろう?体から出てくる粉末
あれを10分摂取するごとに記憶と体が一年前に戻るんさね」
「僕自身も、個性と体の相性が悪くて…よく個性暴走をするんですよ
助けてくれてありがとう、えっと…轟、くんだっけ?」
弱々しく笑うヒーロー科の彼の、体から出てくる粉末は徐々に弱まっていった。
「まぁ、あんたとしては上出来だよ
個性事故を起こさなかったのはこれが初めてじゃないかね?」
「いやぁ、でも、本当に
スグ気づきましたし、授業中だったから保健室に着くまで誰にも会わなかったんですよ
それに保健室にも1人だったから」
そこまで聞いたところで、轟は、ハタと顔を上げる。
「……1人じゃねぇぞ」
その言葉にリカバリーガールも、マスクの下で口を開けた
「え、まさか…」と狼狽する先輩を押しのけて、隣とカーテンを開けた。