第36章 プルミー
「ん」
と突き出された左手
手を繋ごうと言いたいのだろうか
そっと手を重ねると
強く握り返してくれる。
学校からすこし歩いたところのショッピングモールにつく
勝己とデートするのは久しぶりだ。
よくここには学校帰りに来ていた
多分記憶をなくす前だったから…4ヶ月ほど前だっただろうか
この何ヶ月かで色んなことがありすぎた
(何ヶ月か前は
勝己と恋人同士だったんだよね…)
斜め上の勝己の顔を盗み見る。
(やっぱり…好きだなぁ)
自分のことは、かなり浅はかな女だと思う。
もし、今勝己に「俺を選べ」って言われたら
『うん』って即答してしまうだろう。
でも、私の方から『私、勝己と付き合うよ』と言い出そうとは思わない。
好きは好きだけど、
じゃあ、今選んで、焦凍に迫られても平気かと言われると
断れる自信はあまり無い。
でも…
(やっぱり当分、焦凍に会いたくないな…)
俯いていると、目の前にクレープを差し出される。
『あ、ありがとう』
私がいつも頼んでいた杏仁イチゴのクレープだ
(覚えててくれたんだ…)
そう思うと、じわっと涙が溢れそうになる
でも、せっかくの仮免講習がないお休みに
せっかく勝己が連れ出してくれたんだもん。
泣いたりしたくなくて、
甘いクレープに噛み付いた。
最初の一口は、ただ甘くて
甘かった。