第35章 シェイクミー
『どっちも…欲しくない?』
「そう、
だって、どっちも完璧じゃないから悩むんでしょ?」
寧々は頭を鈍器で殴られたような衝撃にフラついた
バランスを崩す体をアラタが支える
そんなはずはない…
あの2人のどちらも要らないなんて答え
あってはいけないのだから
『そんなこと…ない…絶対…!』
「あっちゃいけないって?」
『っ……』
心の中を見透かされたような気がして唇を噛む
「寧々、今は分からなくても
そのうち認めることになる…
どっちも欲しいは、どっちも欲しくない…の意味だ」
聞きたくない、聞きたくない!
思わずアラタを突き飛ばしてしまった。
その拒絶が、アラタの言葉の肯定したことになり
彼の口角は釣り上がる。
「そろそろ帰るよ
またね、僕の可愛いお姫様」
手を振ってヒラリ、踊るように去っていく男の背を
見ることもせず、立ち尽くす。
さっきの言葉が、脳みそに焼印を押したみたいに定着して
首を振っても、剥がれやしない。
『そんなはずないもん…』
私なんかを好きになってくれた2人なんだ
私にはもったいないほどの人なんだ
うん…そうだよ
『いきなりきたアラタなんかに分かるわけない…』
芽生えた不安の消し方を寧々は1つしか知らなかった。
スマホを取り出して
ラインを送る
その指は震えている。
まるで中毒症状だ。
返事が届いた音とともに寧々は駆け出した。