第35章 シェイクミー
轟と爆豪は例のごとく仮免講習に向かっていた。
あからさまにイライラしている爆豪を見るのは
轟にとって久しぶりで
きっと、アラタが元恋人だということを知って、イライラしているのだろうと容易に想像がついた。
「なぁ、爆豪」
「あ゛?!話しかけんじゃねぇって何回も…」
爆豪は轟を睨みつけたが
その目がいつものものと違うことに気づいて
ルーティンのようになっていた拒絶の言葉を止める
「あの、煙火ってやつ
悪りぃ奴じゃねぇみてぇだな」
「は?
何言ってんだてめぇ…」
爆豪は信じられないと言った様子で目を見開く
「…あいつも俺らと同じで
寧々の事がすげぇ好きなだけな気がしたんだけどよ」
「…なら、なおさら
邪魔な存在じゃねぇか、何言っとんだ」
ケッと舌打ちして、爆豪は前を歩く
うまく言葉にできないし、考えを伝える事が難しい。
けれど、確かに轟の中にはある考えがあった。
そしてそれは、アラタに出会った事で、
はっきりと形を帯びて来ていた。
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アラタとのデートを終えて、
寧々は並び歩きながら、アラタの話を聞いていた。
「……ごめんね、疲れてるのに連れ出して」
アラタの言葉に視線を移す
別に疲れてはいなかったし、さすが初恋の代名詞と呼ばれるだけあって
アラタのデートプランは、女の子を思いやった
楽しいものだった。
知らない県でここまでのデートを準備するとなると
なかなかに下調べをしてくれたのだろう、
そう思うと、ニコリともしなかった自分自身を恥じてしまう。
『ううん、今日はありがとね
楽しかったよ』
そう言って、今日初めての笑顔を向けると
アラタはホッとしたように笑った
そして、
両手で寧々を引き寄せると
無言で抱きしめてくる。
寧々は一瞬抵抗しようと思ったが
いつものおちゃらけた雰囲気とは違うことを察して
何も出来ぬまま抱きしめられていた。