第35章 シェイクミー
待ち合わせ時間に、校舎の前に行くと
遠巻きに熱っぽい視線を向けられているアラタを見つけた
どこにいても目立つ彼との待ち合わせは
恥ずかしいし、視線も痛くて好きじゃない。
なんでこの人はここまで目立ってしまうのだろう
なかなか近づけずにいると、
アラタの方から近づいてきて、ポン、と花束を差し出してくる
「おはよう姫♡
いつも可愛いけれど、俺のためにオシャレしてる姫が一番かわいいよ」
「「キャーーーー」」
と黄色い歓声の中で
私は目を閉じて深呼吸をする
『うん、わかったから
早く行こう』
半ば強引に手を引いてその場を去った
あの中に雄英生が何人いたかは知らないが
またラムさんの時みたいに、いらぬ嫉妬を買うのは嫌だったから。
「寧々、寧々!」
ガツガツ歩いていると、掴んでいた手が、先を進むのを止める
『なに』
少し怒った顔で振り向くと、
ニコニコした顔で、手を握り直し
「しかめっ面しないでよ
な?
怒ってる顔もかわいいけどね」
と眉間を撫でてきた。
『そりゃどうも』
撫でてくる指先を軽くはらって答えても
アラタは笑顔を動かさない。
どんなに冷たくしても、アラタはいつもニコニコしているのだ。
そうしてる間に増える罪悪感
結局いつも私が折れてしまう。
アラタは私の心の中を察したかのように
髪を撫でて
手を引いて歩き始めた。