第34章 ゲットミー
目が覚めたら、勝己がキツくだきしめてきた
『どしたの』
腕をほんの少し動かして、抱きしめ返すと
「ん」と短い返事が帰ってくる。
「俺の事、好きか?」
耳の後ろで響く声は、なんとも不安げだ
どんな顔をしているのか見たいけれど
そんな不安な顔なんか見られたくないのだろう
首を動かすことも叶わないほどキツく体を縛られる
『好きだよ』
ハッキリと答えれば
拘束が緩んで、勝己と向き合うことが出来る
額と額をあわせたままで、
撫でるような声を出す
『好きだよ、勝己』
勝己はほんの少し困ったような
納得の言ってないような顔をしたけれど
何かを飲み込んで、口付けをしてくれた
「信じる」
『うん…』
不安にさせる要素は多々ある、
というか不安にさせる要素しかないようにも思える。
だとしたら、今は少しでも安心してもらえるように
間違っていたとしても
気持ちを伝えることしか出来ないのだろう
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教室について、スマホを開くと
アラタからLINEがきていた
アラタ【大丈夫だった?】
『大丈夫だった…?ってなんのことだろ…』
焦凍と勝己の事ならとうに話したはずだし
【なにが?】寧々
そう返せば、すぐに既読になって
新しい吹き出しが生まれる
アラタ【意外と冷静なんだね、アイツ】
【???】寧々
アラタ【ううん、なんでもないよ
それより、明日迎えにいくけど
どこでデートする?♡】
【デートじゃないから】寧々
そこまで返したところで、先生が入ってくる
一時間目は道徳だ
私は道徳の授業が好きじゃない。
『強個性』を持つものはヒーローになるべき
という類の言葉は私にとって重みでしかない。
もし、クラスメイト達に私の個性が、
チート級のコピー能力だとばれてしまったら…
そう思うと怖くて仕方がない。
A組への転入の話なんてばれようものなら…
考えるだけで震える右手を隠すように抑えた。