第32章 カースミー
もしクラスメイトに知られようものなら
喉から手が出てでもヒーロー科に入学したい彼らに恨まれてしまうだろうと思いながら
自分の膝を見つめる
『これは、私の個性が、もし仮に
キスミーじゃなくて、コピーだったとしても
答えは同じです…
私はヒーローにはなれません
もともと、なれないと思っていたんですけれど
雄英に入って…ヒーロー科の人と関わるようになって尚更
私にはできない仕事だと思いました…』
リカバリーガールは何も言わずに聞いている
まるで続きを急かされているような気持ちになった
『本来コピーは、他者がいなければ無個性みたいなものです
それでも、兄がヒーロー科に入って仮免許まで取得できているのは
兄が頭の回転が早くて、仮に無個性だとしても、人よりも動ける身体能力と、判断力、あと…精神力があるからなんです。
現に兄は、小さい頃に個性なしで何度も私を助けてくれました…
けれど、私には…
そのどれも無いんです…』
そこまでいったところで、寧々はふと我に帰った
なぜここまで、ヘタレの私が
あの二人と一緒にいるのだろう。と
ずっと思っていた事ではあった
けれど、コピーが女性相手には頬に口づけを落とす事で使えるとわかってから
おこがましいかな、彼らの手助けに
少しはなれるのではないかなんて思ってしまって
その結果が、林間学校だ
私がいなければ焦凍と勝己の足でまといにならなかっただろうし
勝己の奪還作戦だってべつに私がいなくても上手くいっただろう。
自覚はあったけれど、認めたくなかった
やっぱり二人がなんと言ってくれようと
私は……
「校長には私から言っておくさね
そんなに気を落とさなくていいよ」
『あ…はい…』
その時ドアが2度ほど軽くノックされた音がした
「友達じゃないのかい?」
時計を見るともう6時を少しすぎていた
さきとゆきちゃんが、あのラムさんの一件以降暗い時間に学内で1人にならないようにって迎えに来てくれている
『そうですね』
優しい友人の顔を思い浮かべながらドアを開けると、そこに居たのは友人ではなくて
『焦凍…!
え…なんで?』
少し照れくさそうにしている焦凍で
私は驚いて声を上げてしまう