第32章 カースミー
俺は、いつも少し出遅れてしまう
今だってそうだ
寧々の部屋の前に着いたところで
部屋の中から話し声が聞こえて
それが爆豪の声だと分かり
ノックしかけた手を収めた
こんな感情にはもう慣れた
きっと、俺だけじゃねぇはずだ
爆豪も同じ痛みを経験してんだろうな
もう辞めてしまおうかと
思ったことは、不思議とねぇ
寮を出かけたところで、寧々友人に出くわした
「あ、轟さんこんにちわー
寧々に会ってたの?」
「いや、先客が居たみてぇだから
今日は帰る」
「あ…そうなんだ、ごめん変なこと聞いて」
寧々の友人は申し訳なさそうに苦笑いをする
「別にいい」
「寧々はさ、ちゃんと轟さんのことも好きだよ」
「そうだな…
ありがとな、えっと…」
「あぁ、矢沢だよ
矢沢さき」
「ありがとな、矢沢」