第1章 ドントタッチミー
「寧々ー?」
自分の個性を呪っていると、目の前に金色が飛び込んできた
『…お兄ちゃん』
金色のサラサラの髪、垂れた目はグレーブルー
物間寧人、私の双子の兄だ
いや、兄だった、が正しい
五年前、両親の離婚により私は母方に引き取られ
お兄ちゃんは父方
なので苗字ももちろん違う
それに、兄は母に似て金髪碧眼だが
私は父に似ているので髪も目の色も違う
「ぼーっとしてどうした?もうすぐ学校着くよ?」
『う、うん
ちょっと考え事してたー』
ヘラっと笑うと、お兄ちゃんは心配そうな顔
「寧々は抜けてるから心配だよ
兄ちゃんと同じヒーロー科に入れたら兄ちゃんがずーーーっと守ってやるのになぁ」
そう言いながら私のほっぺをムニムニと触ってくる
『お、お兄ちゃん
ここ電車だから…ちょっとやめて…』
兄は昔から私に異常なまでに甘い、甘々なのだ
ところ構わずベタベタしてくる所は高校生になるという年齢になっても変わらない
「あーー寧々も雄英でよかった〜
どっちの家も学校遠いから2人で暮らせるし
寧々とまた一緒に住めるとか幸せすぎる…」
さっき注意したばかりだと言うのに、兄は後ろから覆いかぶさるように抱きつきスリスリ頬を寄せてくる
後少しで降りる駅だから我慢しようと
私は無の表情で耐えた
でも、と兄は付け加えて言う
「そういえば、
寧々は普通科なのに、なんで雄英にしたんだ?」
本当のことを言い淀んで
私は口を開いた
『そ、それは…
あれだよ、お兄ちゃん雄英にするかなって思ったから…』
そう答えると、感涙するほど喜ぶ兄
ごめんねお兄ちゃん…
(初恋の人が、もしかしたら居るかもしれないなんて理由で
高校選んだなんて、恥ずかしいこと
言えないもん…)
プシューという音とともに、電車のドアが開いた