第31章 ハッシュミー
愛想のいい笑顔に一瞬勝ち誇ったような雰囲気を感じ
爆豪と轟は固まっていた足をズカズカと進めて
寧々を煙火から引き剥がす
『わ!?え?勝己?焦凍!?』
突然の二人の登場に、驚くが
それよりも引き剥がしついでに、二人に抱きしめられている事の方が驚きで、
寧々は、すぐに赤面してしまう
「わー
ヒーローのお出ましだ」
煙火がチャラけた声でそう言うと、
爆豪は「あ゛ぁ?!」と噛み付くような声を出した
そんな爆豪を完全無視して、
軽く手を上げるとタクシーが止まる
「じゃ、また迎えに来るからね、姫♡」
煙火はヒラヒラと手を振ると、タクシーに乗り込んで
気まずさだけを残して、いなくなってしまった
台風の去った後、寧々は強いニトロの香りと
冷気に、体をビクつかせた
恐る恐る振り返って見ると
二人が、タクシーの走り去った方角を
怒りをあらわにして睨みつけている…
「あいつは誰だ」
『幼馴染、週末お兄ちゃんと実家帰ってたの』
轟の問いにそう答えると、爆豪は
「幼馴染が…抱きしめたりしねぇだろ…っ」
と唸るオオカミのような声を出す
轟は、こんな声は体育祭以来だと爆豪に視線を向ける
あの時と同じように目の角度が80度ほど釣りあがっているのを見る限り、相当に怒っているのだろう
『あー、あの人誰に対してもあんな感じだよ…』
それは割と本当の話だ
アラタは、みんなの王子様
女子にも男子にもスキンシップは多いし
手を握ったり、抱きしめたりなんかは彼にとってはハイタッチと変わらないんじゃないかと思う
『それより…二人とも…近い』
寧々は真っ赤になった顔を俯き
蚊の鳴くような声で現状を訴える
アラタの時は、全く反応を示さなかったというのに
二人に抱きしめられるとここまで心臓が爆発しそうになるとは
身体は正直とはよく言ったものだ
照れる寧々の身体を離すと、爆豪と轟は
見るからに機嫌が悪そうな表情をする