第30章 ミーンミー
『ご、ごめん…』
「寧々に…会いたくて帰ってきたんだけど
迷惑だったよな…
向こうで、なかなか友達できなくてさ…
寂しくて、久しぶりに…っ…」
言葉の途中で俯く煙火
『そうなんだ…』
寧々は、煙火の事だからオーストラリアにいっても人気者だと思っていた
知らない地で、友達も居ないとなるとその孤独感はすごいだろう。
『私も…なかなか帰っては来れないけど…会える限り会うから…ね?』
「毎週帰ってくるのは、難しいよな
でも…俺が…会いにいったら時間作ってくれる?」
眉を垂らしてのぞきこむような上目遣いで聞く煙火、今にも泣き出しそうな顔をしている同級生に寧々は
『うん!会う、会うから泣かないで!』と手をバタつかせて言った
「本当に…?約束してくれる?」
『する、するから』
そう二つ返事をすると、寧々の両手が煙火に握られる
「やっぱり、寧々はおバカなくらい優しいね♡」
『………』
さっきまでの潤んだ瞳は何だったのだろう
幻か何かだったとしか思えない
だって、目の前の男は、さっきとは打って変わってニコニコとご機嫌で鼻歌まで歌っている
『騙された…』
半年以上あって居なくて忘れていたが
アラタは相当な策士だった…
苦虫を噛み潰したような顔をする寧々
騙されたとはいえ、約束してしまったものは仕方がない
(まぁ…土日だけだし…)
アラタに聞かれないようにため息をはいて
少し冷めた紅茶に口をつけた