第30章 ミーンミー
ドアを開けると、想像通り
そこに居たのはアラタだ。
ラフな白いVネックのTシャツに着替えている
「よ、入っていい?」
『ダメ』
抵抗してみるけど、意味が無いのは分かってる
アラタはニッコリと綺麗な顔で笑うと
ポン、と頭を撫でて「おじゃましまーす」と勝手に部屋に入ってきた
私は半ば諦めてドアを閉める
すると、アラタはドアを閉めた私の手を引き
向かい合わせになると、ドアに押し付けるような体制になった
「…相変わらず流されすぎ」
ニヤリと笑う綺麗な顔を下から眺めていると
ドアに付いていた手が腰に回されて抱き寄せられた
「男にこんな簡単に抱かれんなよ」
『やってる本人が言っても…
説得力ないけど』
「そりゃ言う通りだ」
アラタの手が身体から離れる
抵抗しないのは、アラタが本気じゃないって知ってるから
こうやって、女の子の反応を見て楽しんでいるだけだ
「雄英どう?楽しい?」
現にもうさっきの事はどうでもいいというように、ソファーに座ってニコニコと話しかけてくる
『うん、楽しいよ
寮生活にも慣れてきたし』
適当な返事をしながら、紅茶を入れる
「そうなんだよな
寮だと、俺遊びに行けないじゃん
会えても毎週土日だけ?」
『え、土日会うの前提なの?
なんで?アラタ沢山友達いるんだからそっちと遊びなよ』
寧々は、ポットとカップの乗ったお盆をローテーブルに置いて、ソファーに座りながらあからさまに嫌そうな顔をする
「なぁ…俺、何かしたか…?」
突然投げかけられた問いに、寧々は驚いてミルクを零しかけた
『…なに、いきなり』
「前はそこまで俺のこと拒否しなかっただろ…
ここまであからさまに変わると…俺も…」
傷つく、と言った言葉はほとんど聞き取れないほど
どれだけ突き放しても、ニコニコと口説き文句をかけ続けてきた彼がそんな風に肩を垂らす姿を見たのは初めてで
寧々は、いくら迷惑だからといっても
やりすぎたと反省する