第30章 ミーンミー
夕食時になってもアラタは当たり前のように広いテーブルに同席している
「なんでまだこいつが居るの?」
不機嫌そうにナフキンを口に当ててお兄ちゃんが言うと
ママはウットリと隣に座るアラタを見つめて
「あら、私が言ったのよー♡
だって、アラタちゃんったらオーストラリアから帰ってきたらさらにイケメン度増してるんだもんー
さすがみんなの王子♡」
「ありがとうお義母様
でも僕はみんなの王子じゃなくて、寧々だけの王子ですよ」
にっこりと答えるアラタにママは口元を押さえて
「あら♡」とわざとらしいリアクションをする。
私は何も聞こえてないふりをして、ナイフとフォークを黙々と動かした。
ママの言う通りだ
煙火アラタは超がつくほどのイケメン
高校1年生というのに180㎝は超えていて、
細いくせに程よくついた筋肉
大きな手に、男らしい腕、少し焼けた肌
その癖顔は甘くいたずらっぽい
タレ目に釣り眉、綺麗な形の厚い唇
彼をみんな、王子と呼ぶ
と言うのも、その甘いルックスに加えて
歯の浮くようなセリフ
美しい身のこなし、特技はピアノときたもので
今のご時世に中学の頃から他校までファンクラブができるほど
そういえば、ジャニーズによく似ている人がいたはずだ
周りの女子が中島健人に似てると言ってた思う
個性は火炎
体の一部を火に変えることが出来るけれど
「熱いから」という理由で本人はそんなに個性を見せたがらない
アラタは昔からママのお気に入りだ。
ママは隙さえあれば私とアラタを結婚させようとしてくるけれど
私はアラタが苦手だった。
なんで?と聞かれたら理由はわからない
けれど、彼の時々発する甘い甘い言葉
が恥ずかしくて仕方が無い
現に今まさに、
「アラタちゃん、今日泊まっていくでしょ?」
というママの問に
「姫と同じ部屋でもいいですか?」
なんて、こちらにウインクしながら言ってくる
『やめてよ…
もう子供じゃないんだから』
「バカだなぁ、子供じゃないから一緒に寝るんじゃん」
アラタが色っぽい視線を向けてくる
私はどう返事しても、うまく返されるだけなので
黙って水を口にした。