第29章 イートミー
その頃、寮では仁王立ちの物間寧人の前で
寧々が正座をさせられていた
『お兄…ちゃん
だから、これは…その、別に痛くないよ?…』
目の前にいるのは、いつもの穏やかな兄ではなく
黒いオーラを放っているブラック物間だ
「痛い、痛くないじゃなくて
誰に、付けられたのかな?」
物間が起こっている原因は、彼女の首筋についた
大きさの違う二種類の噛み跡
『う…誰って言われても…』
「轟、だけじゃないよな
種類が違う」
『う…』
「あのサポート科の女が噂してたのはあながち嘘じゃないってことか
爆豪なんだろ?もう1つは」
『…うん
お兄ちゃん、ごめんなさい』
寧々は真っ赤になって俯く
兄はどう思っただろうか、妹が2人の男と肉体関係にある事を知って
軽蔑されたに違いない
というか逆に、クラスメイトやA組の人たちが、わたしたちの爛れた肉体関係を容認している事自体変な話なのだ
「寧々はさ、昔っから押しに弱いよな」
『うん…それは、思う…』
今まで彼氏がいたというのも、全部押しに負けて付き合ったようなものだ
ただ、ポリシーとして火系の男の子を選んでいただけだし
歴代彼氏たちとキスもしなかったのも、運命の男の子との約束があったからなだけだ
それがなかったら、寧々は流されるまま大して好きでもない男と初体験を済ませてしまっていただろう
自分の決断力のなさを再度確認してため息を吐くと
同時に、ぐらりと体勢が崩れて、床に押し倒されていることに気がついた
『………お兄ちゃん?』
「なんで…俺たち兄妹なんだろうな……」
お兄ちゃんの目が見えない
少し長い金髪の前髪のせいだ
「こんなに、似てないのに…
髪の色だって、瞳の色だって、何も…」
『お兄…ちゃん……』
「なぁ、兄ちゃんは…兄ちゃん辞めたいよ」
お兄ちゃんの指がワイシャツのボタンにかかる
私は、金縛りにあったみたいにうごけない
ただ、やっと見えたお兄ちゃんの瞳が
なぜか怖くて、悲しくて
冷たい