第29章 イートミー
前回の補修には居なかった彼女に
爆豪と轟は首をかしげた
最近の若者言葉で話すケミィは高校生とは思えない肉感的な体つき
顔も年相応とは言えず、大人っぽく
金髪は彼女の体をふんわりと包んでいる
「夜嵐〜ナニー
超知り合いー?マジ連絡先〜」
ケミィは轟に連絡先を聞こうと携帯を差し出す
轟は、一瞬考えたが
寧々に言われていたこともあって携帯をポケットから取り出し、ケミィと交換した
その様子を、爆豪は少し驚いた表情で横目に見る
が、夜嵐に視線を戻す
「おいハゲ、この女この間までいなかっただろ」
「おお、居なかったな!!」
大きく返事を返してくる夜嵐の横で
ケミィは嬉しそうに携帯をポケットにおさめた
彼女は、どこかつかみどころのない女で
特に会話に入るでもなく
皆、ただ各々の思いを胸に黙って廊下を進む
- - - - - - - - - - - - - - - - - - -
更衣室に入ると、ロッカーに制服を脱ぎ、コスチュームに着替えた
爆豪は轟の背中をチラリと盗み見ると
案の定、その背中には引っ掻いたような傷がいくつも付いていた
寧々がつけたに違いない傷
同じものが自分の背にも付いているのだろう
爆豪は小さく舌打ちをしてコスチュームに袖を通す
それよりも、気になったことがある
(さっき半分野郎、士傑の女と連絡先を交換したよな…
寧々から手ェ引くんか)
それはそれで、爆豪にとっては好都合だが
轟の行動に違和感を感じていた
ラムの件で、轟はむやみやたらに女と関わるタイプではないと思っていたからだ
もちろん爆豪は、まさか轟が寧々から
女と積極的に関わるように言われているとは思っていない
コスチュームに着替え終えた轟が「行かねぇのか?」と聞いてくる
「行くわ、クソが
俺の前を歩くんじゃねぇ」
(別に、こいつがどうしようと関係ねぇ…)
今日も、相当にキツイ実習になるのだろう
もしまた、怪我をしたら寧々に手当てをして貰えばいい
寧々を思うと、コポッと音を立てて籠手にニトロが溜まる
体温が上昇するからだ
寧々を思えば思うほど、物理的にも精神的にも強くなる
爆豪は来たる死闘にチロリと舌で唇を舐めた