第3章 キャッチミー
残りの授業は、ほとんど脳みそに入ってこなくて
もうどうしたものやら、と頭を抱えていた
勝己くんが何をしたいのかよくわからない
勝己くんのモノになるってどういう意味?
奴隷?!うわぁ、想像できる
本日何回目かわからない溜息をついて、帰り支度をし、駅に向かう
「寧々!」
駅の入口で、轟くんに呼び止められた
『と、どろきくん…』
うわぁヒーロー科の人に今日は会いたくなかったなぁ…
たとえ轟くんでも…
「これ、麗日が返したがってたから
家近いからってあづかってきた」
『え!あ、お弁当箱!
ありがとう…』
差し出されたお弁当箱を受け取る
「今日の、爆豪の言ってたこと」
轟くんが言う
「あれ、本当なのか?
体育祭で一位になって、寧々を奪うとかなんとか」
『いやー、奪うも何も…ねぇ
私、誰のものでもないしなぁ…』
「隠さなくていい、決まった男がいるのは知っていた
それが、物間だとは思わなかったが」
『え?お兄ちゃん?』
「…? お兄ちゃん…?」
『あーうん、勝己くんと同じ勘違いしてるのかも
えっとね、物間寧人は私の双子のお兄ちゃん
私の名字が口付なのは、両親離婚してて私は母方の姓だから
あと、2人とも実家が遠いから、今は二人で住んでいるの』
一気に説明してしまうと、轟くんは顔を手で隠して
「なんだ、そうだったのか」
と呟いた
『勝己くんも何考えてるかよく分かんないよね、お兄ちゃんの事そんなに嫌いなのかな?それで私にまで被害及ぶとかやめて欲しいね』
「うん、寧々が死ぬほど鈍感なのもわかった」
『え、どうしていきなり、てか酷いな』
「じゃあ今から言うことをよく聞いてくれるか?」
轟くんがしっかりと私の方を向いて言う
私も轟くんを見つめる
もう少しで電車が来るようだ
アナウンスが遠くで鳴っている
「まず、俺のことも焦凍って読んでくれ」
『わかった、…焦凍くん』
「うん、
あともし、俺が体育祭で一位になったら
俺と付き合ってくれないか?」
ゴウッと風をつれて、電車がホームに入ってきた
焦凍くんの前髪がサラサラと揺れる
「好きなんだ、一位になったら俺と付き合ってくれ」