第28章 シーミー
「お前、自分の事優柔不断な自分がねぇやつって
思ってるみてぇだけど
適当に答え出さないってのも
信念なんじゃねえの?
わかんねーけど」
寧々の視線がゆっくりと心操に向けられる
『信念…』
「あぁ、人とちゃんと向き合おうとすんのって
簡単じゃねぇって思うけどな」
『……買い被りすぎだよ』
でも、ありがとう
と寧々は少しだけ楽になったような顔で笑った
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その夜、1-A寮ではインターン組が無事帰ってきて
歓喜するクラスメイトの声が響き渡っていた。
今回のインターンは、よりプロヒーローに近い実践を行っていたため、参加した者たちは命を落とす可能性もあったのだ
仮免許を受かっていたら
まず第一線で活躍できたであろう轟と爆豪
インターン組の事を顔には出さないが
気にはかけていたようで
彼らが帰寮したのを確認した後
まだ20時だと言うのに床についた
実践を通じて成長していくクラスメイトに
どこか焦りを感じているのかもしれない
そんな二人を、クラスメイトは心配していたが
プライドの高い二人に、誰も声をかけることは出来なかった。
老人並みの早い時間にベッドに就いた爆豪は
「寝る」と言った割に
ただ天井を眺めていた
一昨日と昨日、寧々とまるで一緒に住んでいるかのような時間を過ごしたせいもあって
一人きりの部屋は、少し寒く感じる
今日も、寧々の部屋に行くと言えば
寧々は『いいよ』と言うだろう
けれどもそれをしなかったのは、
寧々を理由に明日実力を出さないことが嫌だったから
1秒でも早く、追い越していった奴の
肩をひっ捕まえて
俺が前を行きたい
こんなところで立ち止まるわけには…
こんなところで遅れを取るわけには行かねぇ
爆豪は、穴が開くほど睨みつけた天井から目を離し
少しだけ、寧々のことを考えてから
眠りについた。