第28章 シーミー
温め合うように眠って
起きて、また離れて
昨日の言葉を何度も心の中で復唱する
枯れた声の告白を
贅沢なことに、何度も言われているはずなのに
昨日のあれは特別に感じた
頭を机に付して足をブラブラさせていると
心操くんが話しかけて来てくれた
「なんか悩んでんのか」
『うーん…うん』
「て言うより、悩んでねぇ時の方が少ないよな、お前」
『おっしゃる通りで』
肩肘を机について、眠そうな目でこちらを見ている心操くん
「なのに誰にも相談しねぇのって、なんで?」
すべて見透かされているような瞳に
息が止まる
『……してる、よ?』
「表面的なことだけはな」
なんで、そんなことまで分かるんだろう
この人は、心を操れるだけじゃなくて読むことまで出来るのだろうか
『…相談ってさ
あんまり意味が無いのかなっておもってるんだよね』
顎を机の上に乗せたまま、ぽつりぽつりと寧々は話し始める
『結局、決めるのって自分なのかなって
まぁでも、私は自分でなにか決めた事なんて
高校を雄英に来ようとしたことくらいしかないんだけどね…』
でも、それも
初恋の人が雄英に来そうだからっていう理由だけど
『人に相談して、その人の言うとおりに
勝己と焦凍、どっちかと付き合ったら楽だと思う…
本当のところ、最低だけど
どっちも同じくらい好きだから
どっちとつきあっても私は幸せなんだと思う』
心操は、何も言わずに
静かに寧々の話を聞いている
『でも、例えばね「さきちゃんが、あなたと付き合った方がいいって言ったから付き合います」って言われたら
ふざけるなってなるでしょ?
わなければいいんだと思うんだけど
でも、言えないような決め方で、
二人が私に向けてくれている思いに答えたくないなって』
独り言のように話す寧々