第28章 シーミー
夜がふけると、勝己が部屋に来た
部屋に着くなり抱きしめられて指を絡めると
鼻先をすり寄せてくる
『…どうしたの?』
突然甘えるような素振りを見せた彼に
寧々は首をかしげた
「……別に」
別に、と彼はいうけれど
全然「別に」とは思えない態度。
キスをしてくるわけでもなく
ただ、確かめるようにひたいを当てて
すり寄ってくる
「考えてた…」
『ん?』
「お前のこと…
今日会えんだって思ったら
いつもの何倍も
お前のことばっか
たくさん、たくさん
考えてた…」
掠れた声の告白は、焦げ付くみたい
閉じていた勝己の瞳が開くと、私を見て少しだけ笑ったように細くなった
「真っ赤…
リンゴみてぇ」
『…うう』
「そんな旨そうな顔してっと食っちまうぞ」
そう言って、勝己は口を軽くあけると
私の頬に噛み付くような素振りを見せた
『ふふ、何それ』
じゃれてくる犬みたいだと、思わず笑うと
頬、瞼、額、鼻先…
色んなところに勝己の口付けが降ってくる
そして、止んだと思ったら
それこそ、赤い赤いリンゴみたいな瞳が
私のことをまっすぐ見つめてて
あぁ…好きだなって思った
「そんな顔すんなら、
なんでさっさと俺のモンになんねぇんだ?」
まるで全てを見透かしたようなセリフに
心臓が跳ねる
『…な…ん……』
勝己の言葉に、なんて返事をしたらいいのかわからなくて
きっと困った表情をしてしまった
「……悪い…
…今の忘れろ」
あたまの後ろ側を手で添えて、
熱い胸板にひたいを押し付けるように抱きしめられる
「本当に…てめぇはバカだな」
『うん…そう思う』
「鈍感、アホ、モブ」
『うん、うん…』
おっしゃる通りですとも…
抱きしめられる力がグッと強くなった
「すき…だ」