第27章 サプライズミー
私は、強個性でありながら
ヒーローを目指したことなんて、ただの一度もない
子供の頃に見ていた女の子戦士にも憧れたことは無い
思い返せば、何かに憧れたことなんてあっただろうか
子供の頃は、お兄ちゃんが憧れの存在で
4歳の頃勝己と出会ったあとは、どこの誰だか分からない男の子のお嫁さんになるのが夢で
でもそれも、「お嫁さんになれ」って言われたから
そうしようって思っただけで自分の意思ではない
私にも、「なりたい自分」があれば
この性格を治せるのだろうか
私も、自分のことを好きになれたら
勝己や焦凍ときちんと肩を並べられるのだろうか
今まで、ヒーロー科じゃない私が
二人に並ぶ資格なんてないと思っていた
だから、二人の言う通りに
誰かが決めてくれるようにしようと思っていた
けど、それは逃げていただけだ
二人は、私が普通科だからって見下したりしない
ヒーロー科のみんなも
私がこの個性を持ちながら、ヒーローを目指さない腰抜けだなんて笑ったりしない
私は一人で、卑屈になっていただけだ
なんて愚かなんだろう
なんて弱いんだろう
ただ、強くなりたいと願う二人の相手に
そんな考えでは失礼だ
どちらかと付き合うとか、どちらとも付き合わないとか
そういう次元の話じゃなくて
彼らが関わってくれようとしている身として
こんな卑屈な考えはしちゃいけないんだ
その考えは寧々の心の中に染み渡るように浸透していった
寧々にとって、人と比べるとかなり遅い自我の芽生えであった。