第26章 アライブトゥーミー
昼ごはんを済ませたあと、
私はリカバリーガールに呼ばれていたので二人と別れて
保健室に向かう
記憶が戻ったあとの経過をちょくちょく見ていただいているのだ
小走りで、保健室に向かう寧々を、轟は目で追っていた
手元に蕎麦と、なみなみ注がれた蕎麦つゆがのったお盆を持っていたため
追いかけることはできず
緑谷達の待つ席に戻ろうとしていたところだったのだが…
「あれ?轟さんじゃん」
と声をかけられ、声の主を探して視線を動かす
「ここ、ここ」と言われて視線を下げると
すぐ隣の席に寧々といつも一緒にいる女友達が二人
にこやかに手を振っている
「寧々の…」
「うん、寧々無しで話すの初めてだね
私はさき」
「私が、ゆき
よろしく」
「名前はよく寧々から聞いている
轟焦凍だ、よろしく」
なぜその二人が話しかけてきたのか若干疑問に思いながら挨拶をすると
さき、と名乗った方が口を開いた
「ね、いい情報をあげるよ」
「そそ、仕入れたてホヤホヤの」
「?」
嬉しそうに顔を見合わせる二人
轟は状況が読み込めず、ますます首を捻るが
「私らは轟さんと寧々が付き合ったらいいんじゃないかなって思ってるんだ」
「轟さん、優しそうだし、寧々とお似合いだと思う」
その言葉は轟にとって、とても嬉しいものだった
彼女の友人達に認められているということも
寧々とお似合いだといわれたことも。
「寧々、男子の好きな服装
黒いタートルネックらしいよ
デートとかで着てみたら?」
「黒の…タートルネック?」
「うん、首で折り返すあのセーターみたいなやつ」
「私らから聞いたってのは秘密ね」
しー、とジェスチャーをするゆき
「わかった、ありがとな」
丁寧に頭を下げると「いいよいいよー」と手を振られる
「じゃ、そんだけ
がんばってね〜」
二人はそのまま立ち上がって、その場をあとにした
(まさか、寧々の友達に応援されるとはな…)
最近少し、引け目に思っていたことがあった…
爆豪と寧々の間に割り込んでいる自分は悪役なのではないか…という思い
それが、二人と会話したことで、少しだけ軽くなった