第26章 アライブトゥーミー
「で、詳しく教えて!」
昼休憩になるや否や
さきちゃんが身を乗り出して聞いてくる
そんなに前のめりになったら、ネクタイがラーメンに浸かっちゃうよ?とゆきに言われているが気にしない様子
『あれは勝己の服…です』
「ほほーう」
ニヤニヤしながら手で作ったマイクを向けてくるさきちゃん
「さき、最近反応が更におっさんぽくなったよね」
とゆきに言われて、「そんなことないよ」と否定しているけれど、わたしもゆきに同意だ
「爆豪さんの私服ってあぁいう感じなんだねー」
「どんなんだった?」
「うーん…カジュアル?」
さきちゃんはやっと席に腰をかけて
ラーメンを啜りながら首を傾げる
『基本的に寮にいる時はTシャツかなぁ』
思い出してみても、Tシャツばかりな気がしてくる
「寧々は好きな服装とかないの?」
『私はワンピース…かなぁ』
「いや、寧々がじゃなくて
男の子の」
ゆきが尋ねてくるので、考えるが
あまり男性の私服に出会うことがない
強いていえば、お兄ちゃんくらいのもので…
『あ、そういえば』
お兄ちゃんの事で思い出した
期待の目を向けてくる二人には悪いけれど、そんなに面白い話ではない
『去年の、冬かな…
お兄ちゃんが黒のタートルネックのセーター着てて
すごく似合ってたの…
でもね、お兄ちゃんに何か『似合うね』って言うと
そればっか着るのね…
前、パーティに参加した時に燕尾服着てたんだけど
すごく似合ってたから、お兄ちゃんに『王子様みたい』って言ったら
まさかのヒーローコスチュームまで燕尾服にしててさ…』
そのエピソードを思い出すと頭を抱えたくなる
当分のあいだ、私服にまで燕尾服を着ようとした苦々しい思い出だ
もし、黒のタートルネックが似合うねなどと言おうもんなら
スティーブ・ジョブズよろしくそれしか着なくなるだろう
「へぇ…さすが物間くん…って感じだね」
二人とも苦笑いで頷く
「にしても、黒タートルかー
私は萌え袖してる男子が好き」
「私はねー、ダッフルコートフェチ」
ゆきが男の萌え袖の良さについて延々と語ってくれたが
結局理解は出来なかった
ゆきはいわゆるショタコンという部類だと自負しているようで
年下…小学生あたりがイイと強く語られても
首を捻ることしか出来なかった