第23章 キープミー
寧々が殴られたと聞いて
爆豪勝己は自分のことを攻めていた
―― 話は数日前に戻る…
さきとゆきが、寧々の轟への気持ちを話していた学食から逃げた後のこと…
(元から分かってただろ
寧々が俺より、轟の方に気持ちがあることくらい)
それを分かっててあんな告白の仕方をした
「10年間ずっとお前を探していた」なんて、卑怯な手口だ
そう言われて断れる奴なんかそうそういないだろう
気がつくと、爆豪は告白した時の屋上に来ていた
この時間の屋上は、弁当や購買で買ったものを食べている生徒がチラホラいる
誰もいないフェンスに体を預けて空を見上げた
目を閉じて、あの時の事を考える
そんなに昔の事じゃないはずなのに
寧々が自分のことだけを見てくれた、あの頃が
やけに遠く感じた
そうやって風の音だけを聞いていると
「えええー!」という甲高い声に、静寂は破られる
(チッ…うっせぇなモブ女が…)
声のする方向を睨むと、屋上の端らへんで紙パックのジュースを飲んでいる三人組が目に入った
「マジ?その情報!?」
「マジマジ、だってヒーロー科の子が言ってたもん」
「うそー!良かったじゃん!ラムー♡」
ラムと呼ばれた少し派手目の女は嬉しそうに身体をくねらせる
「やった!ゲロ邪魔だったんだよね、あいつ」
と嬉しそうに笑う
綺麗な部類の顔立ちなのだろうが、如何せん言葉遣いが汚すぎる
爆豪は、この癖を辞めたいとため息をついた
目に入る女全員を寧々と比べてしまう癖
その度に、やっぱり好きだと痛感させられて
正直しんどい
また1勝を寧々にあげたところで
フェンスから体を離す
教室にでも戻ろうと思った時
「これで焦凍くんは私のものだー♡」
という言葉で足が止まった
「ラムなら絶対行けるって!
あの口付って奴より可愛いもん」
今すぐ掴みかかって「鏡よく見ろブス!」と言いたくなる衝動を抑える
「そーそー」ともう一人の女が同意すると
ラムという女は髪をいじりながらハン!と笑った