第22章 プレイウィズミー
俺だけじゃねぇ、
きっと爆豪も、人知れず泣いているだろう
現に、いつだったか眠れなくて
外に走りに出ようとした時
爆豪と寮の入口で入れ違いになった
その時のあいつの顔は
爆豪か一瞬わからないほど弱気で、破棄もなく
まぁ、俺を見た途端、すげぇ睨みついてきたんだが…
涙を堪えようとする緑谷に蕎麦を半玉分けてやる
鼻をすすりながら礼を言ってくる緑谷の少し先に
寧々が友達三人と歩いて居るのが見えた
「寧々…」
呟くと飯田が俺の視線の先をを見る
「口付さん、記憶が戻ったんだってね…」
「あぁ…戻った途端振られた」
「でも、かっちゃんとも付き合ってないみたいだよ?」
「爆豪くんと戻らないということは
彼女は轟くんの事を好きなんじゃないか?」
「それはねぇ…と思う
もう、俺らとは居られねぇって
言われた」
遠くに見える寧々も元気がなさそうに見える
「そうなんだ…」
「爆豪は中学の頃、彼女は居たのか?」
緑谷にそう聞いてみると、とんでもない、と言った様子で首を振る
「全くだよ!中学どころか、幼稚園からの付き合いだけど
女っ気は全くなし
いや、でもかっちゃんはモテてたんだ
ほら、何でもできるし
成績優秀だし、見た目もいいし
でも、告白してくる女子という女子に罵声を浴びせて…
それはもう本当に酷いことを…」
「例えば?」
と飯田が聞く
「うーん…モブ女が俺に告ってんじゃねぇ!とか
俺を好きだ?殺すぞ、とか
シンプルに、死ね、とか
顔見てモノ言えとか…
性格が気に入らねぇとか…
でも、何かそう言われて泣く子より喜んでた子の方が多かったかな…なんでだろう」
首を捻る緑谷
思ったより、ひどい罵倒に俺も飯田も何も言えなくなる
「それだけ、寧々さんが爆豪くんにとっては理想的だったということ…なのか」
飯田が上手くまとめようとする
「そういえばね、
僕も聞いたのが、小学校入った頃でうる覚えなんだけど
『俺にはもう決めた女がいる』とか言ってた気が…
『そいつと結婚するんだ』とかなんとか…
あれ…?中学に入ってもそう言ってた気がするけど
高校に来て突然口付さんと付き合い始めたな…なんでだろう」