第22章 プレイウィズミー
最近、気がつくと涙が出ていることがある
別に何かに対して泣いている訳では無い
理由がないと言えば嘘になるが、
ただ心に空いた穴から零れ落ちるように涙が勝手に溢れる
そんな時は
決まって、目を閉じ、寧々を思い出す
すると、心の穴が少し埋まって
涙も自然に止まる
「お前に空けられた心の穴を
お前で埋めるなんて、変な話だな」
スマホの待ち受けから、笑顔を向けてくれる寧々にそう呟くが
もちろん返事は返ってこない
寧々が出て行って
何日かたった
爆豪のイラつきからみて
あちらも上手くいっているというわけでも無さそうだ
相変わらず仮免講習は厳しいが
その忙しさで、少しは気がまぎれる
もっと忙しければいいと思う
一瞬だけでも、寧々の事を考えない瞬間が欲しい
でも、それも無理な話だ
何をしていても、常に頭の中には寧々が居る
息をするかのように考えてしまう
離れてからは尚のこと
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いつもの様に、学食で緑谷と飯田と飯を食っていると
緑谷の様子がおかしい
カツ丼を目の前にして全く箸が進んでいない
「食わねぇのか?」と聞いてみると
「食うよ!食う!クー」と、あからさまに焦っている様子
「インターンに入ってから
浮かねぇ顔が続いてる」
「そ…うかな?」
緑谷はそう言いながらも、また晴れやかではない表情になるが、飯田の優しい言葉で緑谷は堰き止めていた何かが溢れたように泣き始めた
インターンで何があったのかはわからねぇが
相当に辛い壁にぶち当たっているんだろう
そんなことを思いながら震える肩を見つめる
少しして緑谷が顔を上げた
「ごめん、大丈夫…」
「ヒーローは、泣かない!」
目尻を擦りながらそう言ってカツ丼を掻き込む緑谷
――ヒーローは、泣かない…か…
「いや…
ヒーローも泣くときゃ泣くだろ」
涙をこらえる緑谷にそう呟く
俺だって泣いてばかりだ
オールマイトのように、笑って居られたらとは思う
でも、なかなかそうはいかない
どうしようもなく、辛いことがあれば
自然にこぼれ落ちてしまうのが涙だ