第21章 ユーアンドミー
1-Cの寮に戻る道すがら、動悸がして立ち止まる
さっきの縋るような焦凍の表情が頭から消えない
昨日の、絶望した勝己の表情も、脳内にこびりついている
ダメだ、強くならなきゃ…
そして2人に嫌われなきゃ
昔誰かに、嫌われるのには途轍もない勇気がいるんだよって
言われたことがある
ほんとにそうだ
嫌われようとする事がこんなに辛くて苦しいなんて
でも、決めたんだ…
もっとちゃんと最低になって
愛想つかされるまで続けてやる
落としてしまったカバンを掴んで
自室にむかって歩く
あまり使っていなかった部屋は少し埃っぽかった
急いで制服に着替え、授業道具をカバンに詰めて
部屋を出ると
さきちゃんと廊下で出くわした
「寧々ーーー!?」
私を見つけた途端抱きしめてくれる
『さ、さきちゃん苦しいよ』
「だって、寧々が居るんだもん!嬉しくてさぁ!」
ぴょんぴょんと飛び跳ねるさきちゃんの後ろから
ゆきが来て
「体調大丈夫?あんま心配させないでよ」って頭を撫でてくれた
『ごめんね、今日から完全復帰!』
元気元気、と両手で力こぶを作る素振りをみせると
2人はまた私に抱きついてくれた
教室に入ると、ほかのクラスメイトも話しかけてくれる
ノートも各教科ごとに纏めていてくれて…
『みんな、本当にありがとう…!』
涙が出るほど嬉しかった
昼休憩になって、さきちゃんとゆきと学食に行く
「ね、休んでた間あのエンデヴァーの息子さんと住んでたってほんと?」
さきちゃんが声のトーンを落として聞いてくる
『あー…うん、本当』
「爆豪勝己とは別れちゃったの?」
『うーん…てか二人共と別れたんだ』
「「は?」」
ゆきもさきちゃんも、意味がわからないと言った様子で
目を白黒させて私を見てくる
『2人にはもっといい人が居るからさ』
「え、それ2人共納得してんの?」
『う……それは…』
ゆきはいつも鋭い、フォークでビシッと指されると
正直に言うしかなくなってしまう
『半々…ってかんじかな
2人とは今、喧嘩してる…のかな
わかんないけどそんな感じで…
きっとそのうち愛想つかされるっていうか』
2人はため息をついて
「そんなもんかねぇ」
って言ってからそれ以上何も聞いてこなかった