第20章 アイマイミー
時計が3時を指すけれど私は眠れなくて
――そういえば…シャワー浴びたい…
のろのろと服を来て、音を立てないように部屋を出て
シャワールームに向かう
頭からシャワーを浴びると、
勝己と焦凍の存在が私の体から流れ落ちていく
愛された跡が排水口に流れていく様をどこか他人事のように眺めていた
髪を乾かすのもめんどくさくて、
共通スペースを通ってエレベーターのボタンを押す
ゆっくり閉まっていくエレベーターの扉を誰かが掴んで
無理やりこじ開け入ってきた
『か、勝己!?』
「どこ行ってたんだ、お前は」
見ると勝己は汗と泥で汚れていて、さっき落としたはずの勝己の匂いにまた包まれる
『いや、勝己の方こそ、どうしてそんな汚れてんの?』
「チッ…寧々がどこにもいねぇからだろうが」
めんどくさそうに頭をかく勝己
――私のこと探してくれてたの…?
私は何度胸を締めつけられればいいんだろう
私の心臓はどうやらなかなか、丈夫らしい
こんなに握りしめられているような痛みにも堪えつづけて
もういっそ壊れてしまえばいいのに
勝己がエレベーターのボタンをおそうとして
私の方を振り返る、もう既に押していたボタンは5階
勝己の部屋は4階で、焦凍の部屋は5階
勝己は悲しさと、怒りの入り交じった顔で
私をエレベーターの壁に押し付けた
「なんで5階なんだよ…」
『……』
「答えろって」
『荷物…焦凍の所にあるから…』
「そんな理由かよ…」
絞り出すような声に、それ以上何も言えない
エレベーターのモニターが4と点滅して
ドアが開く
「こい…」
腕を掴まれたけど、振りほどいた
『……今日は焦凍の所にいく』
「…っ」
勝己の顔は見たくない、見たら絶対心が揺れてしまうから
今日だけは一緒に居たいって半分泣きそうな声で頼んできた焦凍を
明日の朝一人で目覚めさせたくない
だから…
『ごめん、勝己…』
閉まっていくドアの向こうに勝己が見えた
最後まで、閉まりきるまで
見なければよかったのに…
そんな絶望したような顔をしないで…
手を伸ばそうとした時にはもう、扉は閉まっていた