第16章 ドントフォゲットミー
「前、このカレーは
爆豪用の辛さなのか……?」
轟が沈む声で聞いてくる
そんな顔すんなら聞いてこなければいいのに
「あぁ」
そう答えると
轟は大きくため息を吐き、カレーをかきこんで
水を煽って部屋に戻っていった
切島が何も言わず見てくる
爆豪「んだよ…なんか言いてぇなら言え」
切島「いや、寧々ちゃん
お前とのこと忘れたんじゃねぇんだな
書き換えてるだけだ、あれは」
爆豪「んなモンわかってる」
切島「なら、今寧々ちゃんが轟を好きって気持ちは
書き換えられたお前への気持ちってことなのか?」
「知るか」
知ったところでどうしようもない
俺に向けられてないなら意味は無い
鍋に残るカレーをすべて平らげて部屋に戻りベッドに倒れ込んだ
---今寧々ちゃんが轟を好きって気持ちは、書き換えられたお前への気持ちってことなのか?---
切島のいうことを思い出す
「クソ…」
飲み込んだはずの想い
自分の弱さゆえ、寧々を追い詰めて忘れられた
自業自得だ
でも、忘れられただけならまた1から始めれるのに
書き換えられては、こちらは劣勢からだ
オレの場所に居る轟、あいつはどんな気持ちでそこにいるんだ
向けられる愛情が全て俺へのものだと知りながら
それでも恋人役を続けているのは、それだけ寧々を好きだってことだ
書き換えられた相手が悪かった
他のやつならもっと簡単に取り戻せただろう
眠れる気がしなくて、外でも走ってこようと階段を降りる
洗面所に電気がついているので覗くと
タオルを洗っている寧々
「なにしてんだ」
『ひゃう!!』
近ずき声をかけると驚いて振り返ってくる
『血がついたから…洗ってた』
手元には石鹸とタオル
足元には救急箱
『あ…爆豪くんも怪我してるね…』
寧々が心配そうに眉を下げるので
鏡を見ると、たしかに顔や腕に擦り傷が出来ている
『傷…消毒してもいい?』
足元の救急箱を手に寧々が言う
初めてあった時を思い出した
ヴィランが学校を攻めてきた時、同じように救急箱を手に寧々が話しかけてきたのだった
寧々と共同スペースのソファー席に座る
月明かりだけだが、満月でそれなりに明るい