第16章 ドントフォゲットミー
〜轟side〜
仮免講習は座学かと思いきや、戦闘訓練より激しくて
思ったより傷を負って爆豪と二人で帰る
何度か話しかけたのだが、うるせぇ、黙れ、オレの前歩くな
くらいしか帰ってこず
会話は続かなかった
寧々の事で俺を恨んでいるのだろう
俺が爆豪の立場でも俺を恨む
でももし、お前が俺の立場なら、俺と同じことをしただろう
寧々に愛されるなら、記憶喪失でもなんでも利用するだろ
俺もお前も
明かりのついた寮に戻ると、ふわりと香辛料の香りが漂う
共同スペースを横切ると、キッチンに寧々
机にはクラスメイトの男共が居た
みんなで寧々の作ったカレーを食べているようだ
「ただいま、寧々」
そう声をかけると、キッチンから小走りに来てくれる
『焦凍!…爆豪くんも、2人ともおつかれさま…
って…すごい怪我!大丈夫?!』
寧々が心配そうに顔をのぞいてくる
「見た目よりひどくない」
と言うと、安心したような表情の寧々
切島が「カレー食おう!」と爆豪を連れていく
俺と寧々2人だけになると、寧々はニッコリとろけそうな笑顔で
『焦凍、カレー好きだったよね!たくさんたべてね』
と言う
俺は別段カレーは好きじゃない
とはいえ嫌いでもない
俺が特に好きだと言うなら…あったかくない蕎麦くらいで
カレーが好きだと言ったことは無いと思う
だが目の前の寧々は、俺がカレーが相当好きだと思っているというかむしろ確信しているようでニコニコと得意げだ
「あぁ、ありがとう」
カレーを皿に盛ってくれる寧々
爆豪に『焦凍用の辛さだし…辛すぎたら残していいからね』なんて言っている
俺用の辛さってなんだろう…そう思ってカレーを口に運ぶ
辛ぇ、辛口のレベルじゃない
これが俺用…?俺がこんなに辛口派だっていつ思ったんだ
飲み込むだけで、汗が出るほど辛くて
スプーンが止まってしまう
「悪ぃ…ちょっと辛すぎる」
『え?でも前これくらい辛いのがいいって…』
前ってなんだ?
カレー作ってもらったことは今回が初めてだと思うんだが…
寧々の瞳が不安げに揺れる
斜め前で、爆豪がその激辛カレーをかきこんでいるのが目に入る
そういうことか