第15章 キルミー
『うぅん…』と言い淀んでいると、何かを察したように八百万さんが立ち上がった
八百万「もし、何か忘れているとしても
思い出さないのでしたら、大切な思い出ではありませんわ」
八百万さん…手が震えてる?
上鳴「そりゃないだろ…したら爆豪が可哀想じゃねぇか」
八百万「だって!今は寧々さんは轟さんとおしあわせなのでしょう?ならそれでいいじゃないですか…」
何も良くなさそうな表情で八百万さんが絞り出すように言う
耳郎「一旦落ち着こ?な?」
話の流れが見えなくて困惑してしまう
が、みんな何らかの考えを持って言ってくれてるのだろう…
『…なんか……ごめんね
でも…少しわかった
私と爆豪くんに 〝何か〟があったのは確かなんだね…
しかもみんなが知ってるほどの』
さっきの上鳴くんの発言を聞けばわかる
私は焦凍と、何もかも忘れて幸せになることは出来ないほどに
爆豪くんとの〝何か〟があったってことだ
でも、じゃあなぜ…焦凍とのこのは覚えてて
爆豪くんのことだけ忘れてしまったのだろう…
勉強会を終え、スーパーに行って食料を買う
どこか上の空で、同じところを何度も通ってしまったり
(ボリュームある方がいいって言ってたから
カレーにしようかな…辛いもの好きだし)
辛口と、カレー粉、牛肉、にんじん、玉ねぎ、ジャガイモ
今日晩御飯何にするか悩んでいる人用も作れるようにたくさんカゴに突っ込んでレジを通る
自転車に乗せて帰った
その間もずっと、ぼーっとしてしまう
頭の中にうっすらモヤがかかったみたいに
寮に帰り、キッチンでカレーをつくる
女子用の甘口と、男子用は中辛と…焦凍用の超辛口…
鍋を三つ並べて炒めた材料を分け、味をつけていく
焦凍のは辛口にさらにカレー粉を足していく
結構前、まだ寮に入る前に焦凍の家で作ってあげたらすごく喜んで食べてくれたのだ
それを思い出すとクスクス笑えてくる
あの時の焦凍………
カレー食べてた時の焦凍の顔を思い出そうとしたら
爆豪くんが食べてる姿が脳裏によぎった
ん…?
もう1度思い出してみると、いややっぱ気のせいだ
焦凍だよね…2杯もおかわりしてたの
三種類のカレーが鍋で湯気を放っている