第3章 ホグワーツの戦い
「あなたは何もかも自分のせいだと思っているわ。でもそれは私もそうよ。あの夜、DAのコインが熱くなっていることに気づいたのは私なの。私がフレッドを、戦いに連れて行ったのよ。」
「でも、そんなの…」
「そうよ、どうしようもないことだわ。だけど、あなただってそうなのよ。あなたが頼んでヴォルデモートに狙われたわけじゃない。あなたが頼んで生き残った男の子になったわけじゃない。その事にまだみんなが気づいていないと思っているなら、ハリー、あなたはちょっとおバカさんね」
ハリーは少し救われた気持ちになった。そして、気付いた。わかっていなかったのは自分だということを。
一生背負っていかねばならないものを自分は背負っている。
それは今でも変わらない。
フレッドのあのいたずらっぽい笑顔。ハリーを名付け親にしたリーマス。おっちょこちょいなトンクス…。
ハリーの頬を涙がつたうのを感じた。
そして今、やっとハリーは理解した。
自分がみんなの死から逃げたかったのだということを。自分を責め、悲しみを忘れようとしていたのだということを。そして、そんなことは誰も望んでいないということも。
ハリーは泣いた。止まらなかった。
フレッド…。リーマス…トンクス……。
ジニーも泣いていた。ジニーはまるで、11歳の、秘密の部屋に閉じ込められたばかりの女の子のようだった。
『死とは長い一日の終わりに眠りにつくようなものだ。結局、きちんと整理された心を持つ者にとっては、死は次の大いなる冒険に過ぎないのじゃ』
ダンブルドアの言葉が思い起こされる。それは果たして本当にそうであっただろうか?しかし、ハリーにはそれを確かめる術が無い。
眠りのようなものであろうと、死は悲しい。特に、それを予期していなかった場合。
でも、ハリーは、この悲しみを1人で背負って行く必要はないのだ。
これからの人生は、生き残った男の子としてではなく、残された者のうちの1人として送って行けるはずだ。
みんなを失った悲しみはこれからも時々蘇るだろう。
しかし、みんなの人生はそれだけではなかったのだ。
フレッドは若くして夢を叶え、大成功した。
リーマスとトンクスは不可能だと思われた結婚をし、子供まで授かった。